かつて、広告には「山の頂上」がありました。テレビCMです。あそこに旗を立てれば、日本中に届きました。
いま、その頂上がなくなりつつあります。テレビの出稿も視聴人口も減って、代わりに無数の小さな山——SNS、検索広告、動画——が生まれました。そして、その小さな山々がいつまで同じ形をしているかは、誰にも分かりません。主役の媒体は、数年単位で入れ替わっていきます。
こう書くと、暗い話に聞こえるかもしれません。でも、整理するとシンプルです。
手法には、寿命があります。媒体は入れ替わり、仕組みは変わり、流行の形式は飽きられる。手法の上に建てた売上は、手法と一緒に消えます。
一方で、寿命のないものがあります。お客様の中に積み上がった価値です。
「助かる」という信頼。「好き」という結びつき。「語りたい」という話題。「誇らしい」という支持。この積み重ねは、媒体が入れ替わっても消えません。ブランドという言葉はすごく抽象的ですが、「価値」という日本語に置き換えると分かりやすくなります。ブランドとは、お客様の中に積み上がった価値の総量のことです。
手法を否定したいわけではありません。新しい媒体は、使えばいい。ただ、役割を間違えないことです。
手法は、乗り物です。荷物を運ぶために、乗り換えていい。むしろ乗り換え続けるべきです。でも、運ぶ荷物——自社の価値——が空っぽなら、どんな新しい乗り物に乗っても、届くものがありません。
しかも、価値は放っておくと目減りします。機能はすぐ乗り替えられ、「好き」も接触が減れば薄れていく。だから毎年、手を変え品を変え、企画とプロモーションを続ける必要があります。ただし、それは「流行を追う」こととは違います。変えるのは乗り物で、育てるのは荷物です。
思われ続けるために必要なことは、突き詰めると3つだと考えています。
1. 裏切らないこと——言っていることとやっていることをズラさない。変えない背骨を言語化する 2. 飽きさせないこと——「試したい」「語りたい」を定期的に補給する。変えないものを決めるから、変えるものを大胆にできる 3. 思い出される場所を持つこと——「いつ・どこで・誰と」という想起の入口を押さえる
この3つが、どれも特定の媒体に依存していないことに、気づいていただけると思います。
乗り物は、また変わります。そのときに慌てないように、荷物を育てておきましょう。
業種と6つの質問に答えるだけ。