「パーパス」という言葉が氾濫しています。だが、事業の実態と地続きでない社会的価値は、きれいごとで終わります。
ここ数年、「パーパスを策定したい」「SDGsを打ち出したい」というご相談が確実に増えました。方向は正しいと思います。しかし同時に、壁に立派な理念を掲げたのに、社員も顧客も誰もそれを口にしない——そんな光景も数多く見てきました。何が分かれ目なのでしょうか。
アルチは価値を4つの層で捉えています。役に立つ(機能)、心が動く(情緒)、試したい(認識)、そして意味がある(社会)。社会的価値は、顧客の「誇らしい」という感情で結ばれる、最も深い層の価値です。
この層の特徴は、顧客を「消費者」から「支持者」に変えることです。支持者は価格で離れません。競合のセールで揺らがず、むしろ周囲に勧めてくれます。そして4つの層の中で最も模倣が困難です。理念と歴史は、競合が明日から真似できないからです。
ここが最大の分かれ目です。社会的価値は、後付けのスローガンではありません。その事業が、誰の・どんな困りごとを、どう良くしているか——その事実から立ち上げるものです。
「このジャケットを買わないで」という広告を出したパタゴニアが支持されるのは、言葉が過激だからではなく、修理サービスや素材転換という行動が先にあるからです。地方の酒蔵が「この土地の米と水で、雇用を守りながら百年つくってきた」と語るとき、それはスローガンではなく事実の開示です。買うことが、地域を残すことへの一票になる。
逆に、行動が伴わない大義は最も嫌われます。環境配慮を謳いながら実態が伴わない「グリーンウォッシュ」への視線は年々厳しくなっています。社会的価値は「言う」価値ではなく、「やっていることが知られる」価値なのです。
社会的価値は、きれいごとではなく経営の資産です。効き方は具体的です。
では、自社の社会的価値はどう見つければよいのか。アルチが実際に行う手順は、この3つです。
新しい活動を始める前に、既にある事実を掘り起こします。地元の雇用、技術の継承、廃棄物の削減、取引先との関係。多くの会社は、語っていないだけで、すでに社会的価値の種を持っています。
掘り起こした事実を、「私たちは、誰の、どんな困りごとを、どう良くしているのか」という一文に凝縮します。ここで大切なのは、事業の実態と地続きであること。事業と無関係な社会貢献は、美談にはなっても価値にはなりません。
最後に、それを「宣言」ではなく「物語」として伝えます。現場の人、続けてきた時間、乗り越えた壁。映像が最も力を発揮するのはここです。事実の重みは、ポスターの標語よりも、現場で撮られた3分の物語のほうが何倍も伝わります。
「社会的価値なんて、うちには関係ない」と言われることがあります。私の経験では、逆です。ものづくりの現場を回るほど、語られていない社会的価値に出会います。
共通するのは、本人たちが「当たり前」だと思っていて、語っていないことです。外の目——私たちのような立場——が入る意味は、この「当たり前」を発見することにあります。
社会的価値の言語化は、実は社外より先に社内に効きます。「自分の仕事は、誰の役に立っているのか」に答えを持っている社員は、強い。日々の作業が「誇らしい」につながったとき、現場の空気は変わります。
事業承継の場面では、これが決定的に重要です。次の世代が継ぐのは、機械や取引先のリストではなく、「この会社が在り続ける意味」です。それが言葉になっているかどうかが、承継の成否を分けると言っても過言ではありません。
社会的価値を広告で語るコツは、逆説的ですが「誇らない」ことです。自慢ではなく開示。宣言ではなく記録。お客様や社員や地域の声に語ってもらい、企業は事実だけを差し出す。「誇らしい」は、企業が言う言葉ではなく、周りの人が感じる感情だからです。
あなたの会社にも、まだ言葉になっていない社会的価値が眠っているはずです。アルチは、その事実を見つけ、物語に変えるところから伴走します。
業種と6つの質問に答えるだけ。