生成AIは、制作を速く・安くしました。では、人の仕事はなくなるのか。答えは逆です。「何を伝えるか=価値の見立て」こそ、人が担う領域として、むしろ重くなります。
私は映像ディレクターとして25年、制作現場の技術革新を見続けてきました。フィルムからデジタルへ、テープからデータへ。そして現在は、武蔵野大学アジアAI研究所の客席研究員として、生成AIとクリエイティブの関係を研究する立場にもいます。その両方の視点から、いま現場で起きていることをお話しします。
生成AIが得意なのは、「どう作るか」の領域です。絵コンテの叩き台、映像の下地、コピーの候補出し、編集の効率化。かつて専門技能と時間が必要だった工程が、誰でも・すぐに・安く手に入るようになりました。
これは事実として、制作の一部を確実に置き換えます。「それなりの映像」を作るコストは、今後も下がり続けるでしょう。しかし、ここで見落とされがちなことがあります。「それなりの映像」は、もう誰でも作れるからこそ、差がつかなくなるということです。
一方で、AIがどれだけ進化しても残る問いがあります。
これらはすべて「生成」ではなく「見立てと判断」の仕事です。AIは無数の選択肢を出せますが、その会社の歴史と経営課題を背負って「これでいく」と決めることはできません。選択肢が無限に増えるほど、選ぶ力の価値は上がります。
だから私は、AI時代のクリエイティブディレクターの役割はこう変わると考えています。手を動かすディレクションから、価値を定義し、判断する役割へ。
具体的には、上流の比重が圧倒的に増します。経営課題を聞き、その会社の価値(機能・情緒・認識・社会の4層)を見立て、伝えるべき一言を決める。ここまでが人の仕事の核心になり、その先の制作工程では、AIを含むあらゆる道具を使って最短距離で形にする。
私の現場でも、すでにこの分担は始まっています。AIで叩き台を10案出し、人がインサイトと照らして2案に絞り、現場のクラフトで仕上げる。速くなったのは事実ですが、絞る基準を持っていなければ、10案の前で立ち尽くすだけです。
抽象論ではなく、現場の工程で見てみます。
要するに、AIは「考えるための準備」と「仕上げの作業」を圧縮し、「何を撮るか・何を残すか」という判断の密度を上げたのです。
制作単価が下がると、「毎週動画を出そう」という発想になりがちです。しかし戦略のない量産は、ブランドの語り口をばらけさせ、むしろ「よくわからない会社」を作ります。本数の前に、すべてに通す軸——変えない一言——を決めることが先です。
AIの出力は、平均的に良いものです。そして平均的に良いものは、誰の記憶にも残りません。AIの案を出発点として、その会社にしか言えないところまで磨き込むのが人の仕事です。出力をそのまま使った広告は、どこかで見たような1本になります。
アルチは価値を4つの層(機能・情緒・認識・社会)で捉えていますが、AIの影響はこの層ごとに非対称です。
機能的価値の領域——正確に・速く・安く作る——は、AIによってコモディティ化が進みます。一方、情緒的価値(この会社が好きだ)や社会的価値(この会社を誇らしく思う)は、その企業の歴史・思想・行動からしか生まれません。AIが「作れるもの」を増やすほど、「その会社にしか語れないこと」の希少価値が上がる。これがAI時代のブランディングの構造だと考えています。
「AIで動画が安く作れるらしい」というご相談が増えました。作れます。しかし、先に決めるべきことがあります。なぜ作るのか、誰に届けるのか、何を伝えるのか。この3つの答えがないまま安く量産された映像は、安く量産されたなりの結果しか生みません。
道具が進化した時代こそ、上流の設計に投資してください。アルチは、AIを使いこなす制作力と、25年の「見立て」の両方で、御社の価値をカタチにします。
業種と6つの質問に答えるだけ。