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「なぜ・誰に・何を」——
つくる前に、答えを出す。

2026.04.08 | 森谷 盛広

制作でつまずく会社の多くは、"作り方"ではなく"作る前"でつまずいています。企画とは、つくる前に3つの問いに答えを出す仕事です。

「動画を作ったが、効果がわからない」「WEBをリニューアルしたが、問い合わせが増えない」。こうしたご相談を伺うとき、私が最初に確認するのは映像やデザインの出来ではありません。作る前に、何が決まっていたかです。そして多くの場合、答えは「ほとんど決まっていなかった」なのです。

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3つの問い——なぜ・誰に・何を

企画とは、アイデアを出すことではありません。つくる前に、次の3つの問いに答えを出すことです。

◇1. なぜやるのか(目的)

売上か、認知か、採用か、単価か、社内の一体感か。経営のどの課題を解決するための制作なのかを確定します。ここで大切なのは、「全部」と言わないことです。目的をひとつに絞れないとき、制作物は必ず全部に少しずつ効いて、どれにも効かないものになります。

目的が決まれば、測り方も決まります。認知なら指名検索数、採用なら応募の質、単価ならブランド指名の受注率。計測できる形に置き換えられない目的は、まだ目的になっていません

◇2. 誰に届けるのか(対象)

「30代女性」のような属性ではなく、その人の顔が浮かぶまで絞り込みます。何に困っていて、本当は何を望んでいて、どんな言葉なら手を止めるのか。この解像度がインサイト——まだ言葉になっていない本音——の発見につながります。

ターゲットを絞ることを怖がる方は多いのですが、経験上、逆です。みんなに向けた言葉は、誰の心にも刺さりません。ひとりに深く刺さる言葉が、結果として多くの人を動かします

◇3. 何を伝えるのか(核)

目的と対象が決まると、伝えるべき「一言」が見えてきます。機能の自慢ではなく、相手の本音と自社の価値が交差する一点。良い企画は必ず一言で言えます。この一言が、映像のトーンも、コピーも、媒体選びも、すべての判断基準になります。

3つが曖昧なまま作ると、何が起きるか

実際の失敗は、だいたい同じ経路をたどります。

逆に言えば、この3つに答えがあれば、制作は驚くほど速く、ぶれずに進みます。私たちの現場では、撮影より編集より、この「作る前」に最も時間をかけます。

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「つくる前に、聞く」——アルチの進め方

アルチが「つくる前に、聞く」と言うのは、このためです。最初の打ち合わせで、私たちは制作の話をほとんどしません。伺うのは経営の話です。いまの売上構造、困っていること、これからどうなりたいか。

経営課題から入ると、そもそも「動画ではない」という結論もあり得ます。実際、「まず商品の言葉を整えるほうが先です」とご提案したこともあります。制作会社が制作を売らないのは変に聞こえるかもしれませんが、目的に合わない制作物は、私たちにとっても失敗作だからです。

初回相談で、実際に何を聞くのか

「つくる前に、聞く」を具体的にお見せします。アルチの初回相談で伺うのは、おおよそこんなことです。

この対話の中で、「なぜ・誰に・何を」の答えは半分ほど見えてきます。残りの半分は、現場を見せていただく中で見つかります。工場の音、職人の手元、事務所の貼り紙。答えは会議室ではなく、現場に落ちている——これは25年変わらない実感です。

3つの問いを深める、補助の問い

社内で議論するときは、3つの問いをさらに具体化すると進みます。

◇「なぜ」を深める

この制作をやらなかったら、1年後に何が困るか。逆に、大成功したら何が変わるか。「困らない」なら、その制作はまだ必要ではないのかもしれません。

◇「誰に」を深める

その相手は、いま何と比較しているか。何を信じたら、行動を変えるか。最近その人が「良い」と言ったものは何か。属性ではなく、行動と本音で描きます。

◇「何を」を深める

その一言は、競合も言えることか。自社だけが証拠を持って言えることか。「言えること」ではなく「証明できること」まで絞り込めたとき、企画は強くなります。

チェックリスト——発注前に、この3つに答えられますか

制作会社に相談する前に、社内でこの3問に答えてみてください。

3つとも即答できれば、どの制作会社と組んでも良いものができるはずです。答えに詰まったら——その整理から、アルチと一緒に始めましょう。企画とは、つくる前に答えを出す仕事。それが、完成後の成果を決めます。

森谷 盛広
森谷 盛広

合同会社アルチ 代表/CMディレクター25年。ものづくり企業のブランドコミュニケーションを数多く手がける。ブランド・マネージャー認定協会トレーナー、武蔵野大学アジアAI研究所 客席研究員。

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